ジーン・ワルツ

ジーン・ワルツ (新潮文庫)

ジーン・ワルツ (新潮文庫)

病気で子宮を摘出しなければならなかった産婦人科医で人工授精を専門とする理恵が自分の母親を代理母にして子どもを作るという話。今NHKで放送中のドラマ「マドンナ・ヴェルデ」はお母さん側から描いた話だそうですが、「ジーン・ワルツ」は理恵が話の中心なので、医師としての視点が中心でちょっと怖い・・・。他にも身ごもった子が脳や腕がないというような妊婦さんだったり、何年も不妊治療をしてやっと子どもを授かったというような夫婦も出てきたり、色々考えさせられます。妊娠することが当たり前ではないということは不妊に悩む人がたくさんいる現実をメディアで伝え聞いているのでなんとなく知っているけど、無事に出産することも産まれてきた子どもが五体満足であることも決して当たり前ではないということは自分が出産して、子どものいる友達が増え、色々な話を聞いて初めて知りました。
アメリカドラマを見ていると代理母や養子縁組が当たり前に行われていて、例えば育てる能力のない高校生のカップルや、キャリアを失いたくない独身女性に子どもができてしまったりしたときに産んですぐ養子に出すというような話がよく出てくるし、ゲイのカップルが卵子提供を受けて代理母に出産してもらうという話も見たし、ドラマの中の話だし実際どうなのかはわからないけど、日本にはそのしくみすらないという現実。倫理観や宗教観にも繋がることだし、難しいとは思うけど、だからこそ法律を作らなきゃならないんだと思う。そこを国が先延ばしにしている風に見えるのがなんだかな〜と思う。ただ、医師という立場を利用して代理母という法を犯す行為を隠蔽する(カルテやその他記録の抹消により母親が出産したという事実を消す行為)ってのはなんかね・・・。その秘密が漏れないためにかけた保険が最低すぎる。若くして子宮を摘出しなければならないということは不幸なことだけど、それに対する苦悩とかがあまり描かれていないせいで酷い人にしか見えないので後味は悪い。「マドンナ・ヴェルデ」も読んでみよう。
マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデ